発熱だけでなく、急激な体温変化や放熱不全も馬の生命を脅かします。特に注視すべきは「疝痛(腹痛)」と「熱中症」です。
馬の死因上位に挙げられる消化器疾患において、馬の疝痛と体温変化には複雑な関係があります。初期の疝痛では体温に大きな変化がないことも多いですが、激痛によるストレスで軽度の体温上昇が見られることがあります。一方、腸管の壊死やエンドトキシンショック(毒素血症)に陥ると、末梢循環不全により体温が37.0度以下に急降下する低体温状態に陥り、冷汗をかきます。体温低下と心拍数急増が同時に起きた場合は、一刻を争う超緊急事態です。
また、近年の猛暑環境下で増加しているのが熱中症です。馬は人間と同様に全身の発汗によって体温を下げますが、高温多湿環境では放熱が追いつかなくなります。見逃してはならない馬の熱中症サインは以下の通りです。
・直腸温が40.0〜41.0度以上に達する
・大量発汗の後に突然汗が止まる(無汗症の兆候)
・パンティング(浅く速いあえぎ呼吸)
・ふらつき、瞳孔の散大、呼びかけへの反応鈍麻
激しい運動直後は一時的に運動後の馬の体温上昇(39.5度前後まで上がる現象)が見られますが、健康な馬であれば水冷クーリングによって30分以内に速やかに平熱へ戻ります。もし冷却を行っても39度以下に下がらない場合は、直ちに冷水シャワーを頸動脈や大腿部に当て続け、太い血管を冷却しながら獣医師の手配を行ってください。