石見畳ヶ浦を語る上で欠かせないのが、大地が一瞬にして変動した劇的な浜田地震歴史の痕跡です。今から約150年以上前の明治5年(1872年)3月14日、浜田沖を震源とするマグニチュード7.1と推定される大地震が発生しました。この地殻変動により、それまで海面下にあった浅瀬の岩盤が一夜にして約1.5メートル(約5尺)も隆起し、広大な岩肌が干上がって陸地化しました。これが現在見られる千畳敷隆起海食台の始まりです。
地質調査資料や学術研究によると、この岩盤は今から約1600万年前(新生代新第三紀中新世)の「唐鐘累層(とうがねるいそう)」と呼ばれる地層で構成されています。当時、日本列島がユーラシア大陸から分離し、日本海が拡大していく過渡期の浅海堆積層であり、砂岩や礫岩の中に当時の海洋生物の痕跡がそのまま閉じ込められました。
長年の波浪による侵食作用で平坦に削られた海底(海食台)が、突発的な地震活動によって海面上に持ち上げられ、さらにその後の波風による風化が加わって現在の立体的な造形美が完成しました。学術上きわめて貴重な地質構造であることから、昭和7年(1932年)3月25日に国の天然記念物に指定されています。地震の爪痕がこれほど明瞭かつ広大に露出している場所は全国的にも極めて珍しく、地球の躍動を直感できる貴重な遺産です。