毎月1日の深夜、オンライン予約システムが開いた瞬間に数分で数か月先まで埋まる。まさに「いま最も予約が取れない店」としてその名をとどろかせる「シャン」。2026年現在、その熱狂はとどまることを知らない。多くのゲストが喉を鳴らして目指すのは、シェフが数年の歳月をかけて完成させた秘蔵の「上湯(シャンタン)スープ」だ。
金華ハム、老鶏、豚の赤身肉を、沸騰させずに8時間かけてじっくりと煮出す。濁りを一切許さぬよう、寸胴の傍らを一度も離れずにアクをすくい続けるという。そうして抽出された液体は、琥珀色に透き通り、一口含んだ瞬間に濃密な旨味が口いっぱいに広がる。「このスープさえあれば、余計な調味料はいらない」。シェフのその言葉は自信ではなく、素材と時間への真摯な敬意の表れである。