ネット上の体験談や旅行記において、「覚悟していた以上に過酷だった」と口を揃えて語られる背景には、単なる数字上の段数だけでは測れない3つの要因が存在します。
第一の要因は、「段差の不均一さと傾斜角の急変」です。近代的な建築基準で作られた階段とは異なり、長い歴史の中で組まれた石段は一段ごとの奥行きや高さ(蹴上げ)がまちまちです。特に大門を過ぎて旭社から本宮に至る区間は、石段の傾斜が急激に跳ね上がり、大腿四頭筋やふくらはぎへの筋負担が一気に増大します。
第二の要因は、「下り石段が存在する“マイナス1段”の構造的理由」です。実は表参道から本宮までの階段は、物理的には全部で786段登っています。しかし公式には「785段」と案内されています。その理由は、大門を抜けて桜馬場の手前にある御祓所付近で、1段だけ「下り階段」が設けられているためです。
「786」という数字は語呂合わせで「悩む(なやむ)」に通じるため縁起が悪いとされ、意図的に1段下げることで「786-1=785(ななひゃくはちじゅうご)」とし、さらなる発展の余地を残す吉数へと転換させた歴史的経緯があります。しかし、リズムよく登っていた足腰にとって、途中で一度下がる不規則な足運びは無意識の筋疲労を蓄積させる要因にもなっています。
第三の要因は、「補給・休憩ポイントの偏り」です。表参道から大門までは自動販売機やカフェが充実していますが、大門をくぐると神域保護のため飲食物の調達場所が限られます。水分補給のタイミングを逃したまま無理に登り続け、脱水や息切れを起こすケースが頻発しています。