多くの家庭を悩ませる「揚げている最中に肉だねが外れる現象」は、単なる偶然や油の温度だけの問題ではありません。主因は、加熱時におけるなすと肉だねの熱収縮率のギャップと断面の水分バリアにあります。
なすは約93%が水分で構成されており、油の熱を受けると内部の水分が急激に水蒸気となって外へ噴き出します。一方、ひき肉は熱によってタンパク質が凝固し、中心に向かって縮む性質を持ちます。なすの内側に適切な下処理が施されていないと、噴き出た水蒸気が肉となすの境目に膜を作り、縮む肉だねを外側へと押し出してしまうのです。
この物理現象を防ぎ、完璧な一体感を生み出すための鉄則は次の3点に集約されます。
第一に、なすの断面の水分を徹底的に拭き取ることです。輪切りや斜め切りにした後、空気に触れて浮き出たアクや水分をキッチンペーパーで入念に押さえます。
第二に、つなぎの片栗粉を茶こしで均一に薄くまぶすことです。片栗粉は加熱されるとなすの微量な水分と肉汁を吸って糊化(α化)し、強固な接着層を形成します。手で適当につけると粉だまりができ、そこから亀裂が入る原因になるため、茶こしを使って粉雪のように薄く均一に振るのがプロの現場の基本です。
第三に、挟んだ後の密着プレスとヘタ側の厚み調整です。肉だねを挟んだら、指の腹でなすと肉の隙間を埋めるように軽く押し込み、フチの肉だねをなすのカーブに合わせてならします。なすは皮側よりも中心部が縮みやすいため、肉だねを平らに詰め、なすの厚みを均一の約7〜8mmに揃えることで均等に火が通り、剥離を完全にブロックできます。