一方の「ゆり」、すなわち「百合」というジャンルは、日本の漫画・アニメ・小説において女性同士の感情的・精神的・あるいはロマンティックな関係を描くカテゴリーとして確立されてきた。そのルーツは戦前の少女小説にまで遡れるという見方もあるが、サブカルチャーとして大きく花開いたのは1990年代以降のことだ。
現代の百合ジャンルを代表する作品のひとつが、なもりによる漫画『ゆるゆり』だ。一迅社の「コミック百合姫」で連載され、好きにダラダラするだけの七森中「ごらく部」を舞台に女の子たちの日常をゆるやかに描いた百合漫画で、三度のTVアニメ化を経た人気作品である。「ゆるゆり」というタイトルは「ゆる」と「百合(ゆり)」を掛け合わせたもので、この命名センスそのものが百合ジャンルの持つ軽みとユーモアを示している。
アニメ版「ゆるゆり」は富山県高岡市を舞台としており、2011年7月から9月にかけて全12話が放送された。地方都市を舞台にした「日常系」との融合が百合ジャンルの新しい可能性を広げたという点で、この作品が持つ意義は決して小さくない。
百合作品の間口は広い。すれ違い・勘違い・思い違いが絡み合いながらハッピーエンドへ向かう構成や、初めての恋のときめきとやるせなさを丁寧に描く正統派百合少女漫画まで、その表現の幅は多岐にわたる。読む人によって、そのどこかに自分の感情が映し出される。そこが百合ジャンルの根強い人気を支える理由の一つだろう。