雑誌やテレビの特集で自宅の様子が紹介されるたび、世間を驚かせたのが徹底的に絞り込まれた物の少なさでした。キッチンにある調理器具は、使い勝手の良い鍋が数個と、手になじむ数本の包丁、そして使い続けられた鉄のフライパン程度。便利グッズや流行の調理家電で溢れかえる現代の台所とは対照的な風景です。
家具やインテリアに対しても、その確固たる哲学は貫かれていました。新品の高級ブランド家具を買い揃えるのではなく、骨董市やリサイクルショップで出会った古道具、あるいは知人から譲り受けたヴィンテージ家具に自ら手を入れ、壊れたら直して大切に使い続けていました。
「あるものを生かし、最後まで使い切る」という始末の精神は、単なる節約ではなく、物に縛られずに軽やかに生きるための実践的な知恵だったといえます。