「まさかこんなこと、現実に起きるわけがない」と笑い飛ばせないのが、この作品の真に恐ろしい点だ。近年、日本国内でも他人の空き家や無施錠の住宅に長期間無断で住み着く事案や、言葉巧みに他人の家庭に入り込んで財産と生活を支配する「洗脳・乗っ取り事件」が度々報道されている。
取材に応じた犯罪心理学の専門家は、「人は極度の混乱状態に陥ると、異常な状況を『正常』だと思い込もうとする正常化バイアスが働く」と指摘する。作品内で展開される悪夢は、決して荒唐無稽なフィクションではない。明日、あなたの家の玄関チャイムが鳴ったとき、そこに立っている男が同じ笑顔を浮かべていないと言い切れるだろうか。