コメディ調のドラマで絶大な支持を得た二人だが、その真価は過飾を削ぎ落としたヒューマンドラマでも発揮された。是枝裕和監督が手掛けた2008年の映画『歩いても 歩いても』である。ある家族の夏の1日半を切り取った本作で、阿部は長男・良多を、夏川はその連れ子のある妻・ゆかりを演じた。
『結婚できない男』で見せた軽妙なやり取りとは打って変わり、ここでは義理の家族との間に漂う密やかな緊張感や気まずさが静かに描かれる。是枝裕和監督ならではのリアルな演出のもと、阿部と夏川は日常に潜む人間の業や愛情の多面性を淡々と、しかし凄みを持って表現してみせた。テレビの枠を飛び出し、映画というキャンバスにおいても二人の芝居の相性が突出していることを証明した一作だ。