本作が打ち立てた功績は、単に刺激的なルールを考案した点にとどまらない。当時のギャンブル漫画といえば、巧みなイカサマや仕込み技の暴露が主流だった。しかし福本伸行は、極限状態における人間の尊厳、死生観、そして恐怖心の解剖に焦点を当てた。
このアプローチは出版業界全体に大きな衝撃を与えた。麻雀という伝統的なテーブルゲームを、命を削り合う壮絶なバトルアリーナへと変貌させた手法は、その後のサスペンス作品やデスゲーム系漫画に決定的な影響を与えている。
狂気と論理が同居する独特の台詞回しや、「ざわ… ざわ…」に代表される感情の可視化。それらすべてが結実した鷲巣麻雀編は、漫画表現のひとつの到達点と言えるだろう。