歴史的に「ドヤ」とは、人が住む場所ではなく「宿(ヤド)」の文字を逆転させた自嘲的な隠語として、日雇い労働者向けの簡易宿泊所を指していました。畳2〜3畳ほどの狭小な部屋に布団とテレビだけが置かれたこれらの施設が、現在では世界中から訪れるバックパッカーの宿泊拠点へと姿を変えています。
転機となったのは、1泊2,000円〜3,500円前後という圧倒的な宿泊料金の安さと、無料Wi-Fiや個室エアコンの完備です。古びた木造建築をモダンにリノベーションしたゲストハウスが次々と誕生し、英語対応スタッフや共有ラウンジを備えた施設が増加しました。関西国際空港からのアクセスが抜群であることも手伝い、欧米やアジア圏の若者にとって「安く大阪を満喫できる拠点」として定着しています。
現在でも高齢となった元労働者が暮らす福祉アパートとしての役割は続いていますが、若い旅行者と長年の居住者が同じ路地で挨拶を交わす光景は、かつての閉鎖的なドヤ街のイメージを根底から覆しています。