日本中が知る稀代の語り手・古舘伊知郎を父に持ったことは、彼にとって幼少期からの巨大なアイデンティティの問い直しを意味していました。デビュー当初の「The SALOVERS」時代、彼は自ら古舘伊知郎の息子であることを徹底して公表せず、オーディションやライブハウスのブッキングをすべて自力で勝ち取ってきました。当時のインタビューや手記においても「父の看板で自分の鳴らすギターの音が評価されることへの強い拒絶感」が赤裸々に語られています。
しかし、30代を迎えて以降、その頑なな防御壁はしなやかな受容へと変化を遂げました。メディア関係者によると、2019年以降のトーク特番やラジオ番組、さらには父・伊知郎の公式YouTubeチャンネルなどでの親子対談が実現。公の場で見せた2人のやり取りは、かつての緊張感を完全に脱した「一人の表現者同士のセッション」そのものでした。
父の伊知郎も自身の番組内で「息子のライブを観客の後ろからこっそり観ていたが、自分とは全く異なるシャイでナイーブな表現力に嫉妬すら覚えた」と語るなど、親バカを超えたプロとしての敬意を表明しています。親の威光を傘に着ず、自らの足で泥をすすった経験があるからこそ、現在の2人は健全な距離感を保ちながら軽妙なトークを交わし合える関係へと昇華しました。