なぜオーガズムが受精を助けると言われるのか。その生物学的根拠として最も有名なのが、1990年代に提唱された「アップサック(精子吸い上げ)仮説」です。女性がオルガズムを迎えると、脳下垂体後葉から愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンが大量に分泌されます。このオキシトシンには子宮平滑筋をリズミカルに収縮させる作用があります。
このときに生じる規則的な子宮収縮は、膣内に射精された精子を子宮頸管から子宮腔、そして卵管へと吸い上げるような水流(陰圧)を生み出します。自然状態において、精子が自力で卵管膨大部(受精の場)まで泳ぎ着くには相当なエネルギーを要しますが、子宮の収縮運動がアシストすることで、より多くの元気な精子が短時間で卵子のもとへ到達できると考えられています。
さらに、性的興奮が高まることで子宮頸部から分泌される頸管粘液(おりもの)の分泌量と粘度が最適化されます。酸性に保たれている膣内からアルカリ性の頸管粘液へと精子がスムーズに侵入しやすくなるため、精子の生存率を高める物理的な環境が整うのです。