観光客が最も息を呑む瞬間は、木カゴが川の上空を勢いよく滑空し、東屋のワイヤー終点へ滑り込んでくる瞬間です。カゴの中には団子の折箱とともに、急須から注がれた熱いお茶が入った湯呑み(またはお椀)がセットされていますが、驚くべきことにテーブルへ届いた際にお茶が一滴もこぼれていません。
この驚きの仕組みには、物理的な原理と長年の経験に裏打ちされた職人技が組み合わさっています。
第一の理由は、滑空時に働く「遠心力と慣性力」です。ワイヤーの傾斜に沿ってカゴが一定のスピードで下降する際、液面には重力と進行方向への力が均等にかかり、左右の大きなブレが発生しにくい構造になっています。カゴ自体の重心も計算されており、風にあおられにくい安定性を保っています。
第二の、そして最大の理由は店主による手動ロープの絶妙なブレーキ操作です。店舗側の発信地点からワイヤーの張り具合を手元で巧みに調整し、東屋に到着する直前で絶妙にロープを緩めてスピードを落とします。ドンと激突することなくスッと静止するため、お茶の液面が跳ねることなく無傷で届くのです。まさに長年の勘と技が生み出す、生きたパフォーマンスと言えます。