原曲を知る洋楽ファンと、アニメ映画から入った世代との間で最も議論を呼ぶのが、踊るの好き好き 歌詞と踊るの好き好き 意味の劇的な変化です。英語の原詞と日本語版のローカライズを対比すると、そこには翻訳チームによる卓越した言語感覚が見て取れます。
原曲のサビである「I like to move it, move it / Ya like to... MOVE IT!」という英語フレーズは、直訳すれば「俺は体を動かす(踊る・揺らす)のが好きだぜ、お前も体を動かしたいだろ!」というニュアンスを持ちます。しかし、90年代のクラブ文脈においては、単に「踊る」ことだけでなく、肉体的な魅力や大人のパーティーシーンを連想させるダブルミーニングが含まれていました。
これを映画『マダガスカル』の日本語版へと移植する際、制作陣が生み出したのが「踊るの好き好き! 踊るの好き好き! 踊るの好き好き! みんなも? 好き!」というフレーズでした。「move it」の2音節のリズム(ムーヴ・イット)に対し、日本語の「好き好き(ス・キ・ス・キ)」を完璧にアテはめ、原曲が持っていたダンサブルな躍動感を1ミリも損なわずに、全年齢が直感的に叫べるピュアな「ダンス讃歌」へと見事に昇華させたのです。