「出」の書き順がなぜ「中央の縦棒」から始まるのか。その本質的な理由は、数千年前の古代文字(甲骨文字・金文)における漢字の成り立ちを遡ることで極めて明快に理解できます。
古代の文字学において、「出」という漢字は山とは一切関係がありません。上部は人間の足の形(足跡)をかたどった象形文字である「止(足・歩行の意)」であり、下部は洞窟や住居の出入り口、あるいは境界の窪みを表す「凵(くぼみ・枠)」から構成されています。
つまり、「出」という文字は、「人間が洞窟や囲われた敷地から外へ一歩足を踏み出す様子」をダイナミックに描いた会意文字なのです。
古代文字の字形を見ると、足の甲から爪先へ向かって真っ直ぐ伸びる「前進のベクトル」が中央の主軸として描かれています。文字の構造上、中心となる主幹(足の進行方向)を最初に決定づけ、その後に周囲の境界線や歩みの輪郭を配置していくという設計思想があるため、現代の標準筆順においても「中央の縦棒(1画目)」が文字全体の起点として維持されているのです。