彼女の名を世に広く知らしめたのが、光文社から刊行された著書『おちゃめな寂聴さん』だ。大作家の威厳に満ちた像を心地よく裏切り、人間味あふれるキュートな日常を描き出したこの作品は、出版業界で大きな話題を呼び、異例のヒットを記録した。
続いて発表された『愛すること 忘れること』では、悲しみや別れに向き合う人間のしなやかさを描出し、読者の深い共感を得た。ノンフィクション・自伝の枠組みを超えて、彼女自身が紡ぎ出す文章には、飾らない素直さと人生の機微を捉える洗練された感性が宿っている。単なる「寂聴氏の秘書」という肩書を越え、表現者・瀬尾まなほとして立つ意志が、作品の端々から伝わってくる。