二人の馴れ初めは1980年代後半に遡る。当時、若手歌舞伎俳優として頭角を現していた三代目中村橋之助(現・芝翫)は、NHKの大河ドラマ 武田信玄で武田勝頼役を熱演し、お茶の間でも絶大な人気を博していた。その若々しく精悍な演技は、現在もNHKオンデマンドなどのアーカイブ配信で確認することができる。
一方の三田寛子は「花の82年組」を代表する清純派アイドルとして多忙を極めていた。映画の共演をきっかけに交際へと発展した二人は、1991年に結婚を発表。伝統としきたりに縛られた格式高い歌舞伎界に、現代的な女性アイドルが飛び込むことは、当時としては極めて異例の挑戦であった。
結婚当初、周囲からは数多くの懸念の声が上がった。しかし三田は、挨拶や着物の着こなし、贔屓筋への細やかな気配りなどを徹底的に学び、瞬く間に梨園随一の「良妻」としての評価を確立していった。