マスオさんの驚き声といえば、誰もが「えぇーっ!」と高音に突き抜ける甲高いトーンを思い浮かべるはずです。しかし、長谷川町子氏による原作漫画やアニメ放送開始当初(1969年)には、このような極端なリアクションは存在していませんでした。
この表現が生まれた最大のきっかけは、1978年から約41年にわたり2代目マスオさんを務めた声優・増岡弘さんの演技プランにあります。波平の怒声やサザエの突飛な行動に振り回される「気弱で優しい夫」をどうコミカルに表現するか模索する中で、予期せぬトラブルに直面した際のリアルな動揺を、息が抜けるようなファルセット(裏声)で演じたことが原点でした。
さらに、1990年代以降のお笑い番組において、タレントたちがマスオさんのリアクションを極端にデフォルメしてモノマネを披露したことで、お茶の間に「マスオ=裏返るえぇー!」というイメージが急速に浸透していきました。日常のささやかな驚きを温かい笑いに変える声優の職人技と、ポップカルチャーのパロディ精神が見事に噛み合って生まれた奇跡のフレーズと言えます。