東京ディズニーランドのオフィシャルスポンサー制度において、各企業の担当アトラクションはブランドイメージや事業内容と密接に結びついています。例えば、航空会社のJALが「フライト」をテーマにしたアトラクションを提供し、食品メーカーがレストランを受け持つのは自然な流れです。その中で「日産自動車×丸太舟のアトラクション」という組み合わせは、一見すると意外に映るかもしれません。
日産自動車がスプラッシュ・マウンテンの提供企業となった背景には、1990年代初頭の日本の自動車市場における大きなパラダイムシフトが存在します。当時、日産は初代「セレナ(1991年発売)」を皮切りに、従来のセダン中心からファミリー向けミニバン市場の開拓へと大きく舵を切っていました。「家族みんなで出かける休日」「日常から飛び出すワクワク感」というメッセージを消費者に届けるうえで、3世代が揃って訪れ、笑顔とスリルを共有できるスプラッシュ・マウンテンは格好の舞台だったのです。
スプラッシュ・マウンテンの物語は、ブレア・ラビット(うさぎどん)が「笑いの国(Laughing Place)」を探して旅に出るロードムービー的な冒険譚です。単なる絶叫マシンではなく、「仲間や家族と旅をし、困難を乗り越えて笑顔で帰ってくる」というストーリーラインは、日産が掲げるドライブカルチャーや移動の喜びと完璧に合致します。アトラクションの提供クレジットを通じて、同社は単なる車両スペックの訴求を超えた「エモーショナルな家族の絆」というブランド価値を獲得することに成功しました。