作品を象徴する巨大な木造湯屋「油屋」。あの荘厳かつ猥雑な建築物のルーツについて、スタジオジブリ 公式見解および宮崎駿 監督 公式発言では極めて明快な答えが出されています。
スタジオジブリが発行した公式パンフレットや当時のインタビュー記録によると、油屋は実在する特定の旅館をそのままトレースしたものではなく、「宮崎監督の記憶の中にある様々な古い建物のパッチワーク」として構築されました。その中でも、制作初期から明確にロケハン(現地取材)の対象として公認されている筆頭が、東京都小金井市にある江戸東京たてもの園 子宝湯です。
江戸東京たてもの園には、足立区千住から移築された昭和初期の銭湯「子宝湯」や、明治初期創業の文具店「武居三省堂」が保存されています。宮崎監督は制作当時、同園のマスコットキャラクター(えどまる)をデザインするほど頻繁に足を運んでおり、子宝湯の重厚な唐破風(からはふ)屋根や格天井、武居三省堂の壁一面に並ぶ引き出し(薬草を扱う釜爺の部屋の原型)に強いインスピレーションを受けたと公言しています。
監督自身、過去の記者会見や対談において「色々な温泉旅館の記憶が混ざり合っている」と述べており、特定の1軒に限定せず、日本の木造建築の粋を集約させた架空の空間こそが油屋の正体です。