広告関係者の間で頻繁に研究対象となるのが、龍角散CMにおける「音」の演出効果です。同社の経営トップである藤井隆太社長は、桐朋学園大学音楽学部出身でプロのフルート奏者としての経歴を持つ異色のリーダーとして知られています。
この特異なバックグラウンドが、龍角散CM曲BGMの選定やサウンドデザインに色濃く反映されています。テレビから流れる「ゴホン!といえば龍角散」のジングルは、人間の聴覚が最も警戒と関心を抱きやすい周波数帯を意識して調律されており、過度な音圧に頼らずとも耳へ滑らかに飛び込んできます。
また、龍角散CM放送経緯を辿ると、単なる商品告知にとどまらない企業再生のドラマが存在します。かつて経営難に直面した際、同社は従来の「うがい薬・咳止め」という固定観念を打破し、「水なしで喉の粘膜に直接作用する微粉末生薬」という独自価値に焦点を絞った広告戦略へ舵を切りました。秋田県八峰町などで行われている国産生薬の栽培現場をCMに登場させたドキュメンタリータッチの手法も、「顔が見える製薬」としての透明性を訴求する画期的な試みでした。