三谷大河に対しては、時に「コメディ色が強すぎて歴史考証が軽視されているのではないか」という批判的な言説がネット上で散見されます。しかし、これは実態と大きく異なります。
三谷幸喜は執筆にあたり、時代考証を担当する歴史学者たちと極めて綿密なディスカッションを重ねています。最新の歴史研究の成果を積極的にプロットへ反映させつつ、「歴史の隙間(史料に明確な記述がない部分)」を見つけ出し、そこにドラマチックな人間ドラマを構築しているのです。
たとえば『鎌倉殿の13人』では、定説とされてきた事件の背景に斬新な解釈を与えながらも、当時の政治的力学や武士の行動原理を忠実に再現しました。笑いとシリアスを自在に行き来するトーンは、歴史に対する深い敬意と徹底したリサーチの上に成り立っている高度な職人芸といえます。