抹茶と煎茶のキャラクターを決定づける最初の分岐点は、茶畑の環境にあります。茶葉の栽培方法には、太陽の光をたっぷり浴びせる「露地栽培(ろじさいばい)」と、日光を遮断する「覆下栽培(おおいしたさいばい / 被覆栽培)」の2種類が存在します。
一般的な煎茶は露地栽培で育てられます。日光をふんだんに浴びて光合成を行うことで、根から吸い上げた旨味成分「テアニン(アミノ酸)」が、ポリフェノールの一種である渋味成分「カテキン」へと変化します。その結果、キリッとした爽快な渋味と清涼感のある香りを備えた茶葉が育ちます。
一方、抹茶の原料となる茶葉は、収穫前の約20日〜30日間にわたり、茶園全体を黒い遮光ネットや藁(よしず)で覆う覆下栽培が施されます。光を90%以上遮ることで、茶葉は光合成を行えず、テアニンがカテキンへ変化するのを強力に抑制します。日光を求めて葉は極限まで薄く広がり、葉緑素(クロロフィル)を大量に生成するため、目を見張るような濃いエメラルドグリーンに仕上がるのです。
このカテキンとテアニンの含有量のコントロールこそが、抹茶と緑茶の味や風味の違いを生み出す最大の要因です。渋味が少なく、奥深い甘みと濃厚なコクが際立つ抹茶の味わいは、太陽光を遮る職人の高度な管理技術によって生み出されています。