インターネット上の情報空間には、愛犬家を危険に晒すいくつかの根深い誤解が流通しています。その最たるものが、「メラノーマ=黒い腫瘍」という固定観念です。
獣医学的に極めて危険な盲点となるのが、メラニン色素を産生しない「無色素性メラノーマ(Amelanotic Melanoma)」の存在です。この腫瘍は、悪性黒色腫でありながら黒色を呈さず、淡いピンク色、白っぽい結節、あるいは赤く腫れた肉芽のような外観を呈します。「黒くないからほくろやメラノーマではない」「普通の虫刺されか皮膚炎だろう」と自己判断して軟膏を塗り続け、結果的に病状を壊滅的に悪化させる飼い主が後を絶ちません。
また、「良性のほくろを触ったり刺激したりしても平気」という認識も危険です。特に肥満細胞腫の場合、病変を飼い主が頻繁につまんだり撫で回したりすることで、腫瘍細胞内の脱顆粒(ダリエ徴候)が引き起こされ、血中に大量のヒスタミンが放出されます。その結果、急激な局所の腫脹や潰瘍化だけでなく、胃十二指腸潰瘍による吐血、最悪の場合はアナフィラキシー様ショックを引き起こすリスクすら存在します。皮膚の「できもの」を素人が無理に絞ったり、引っ張ったりする行為は厳禁です。