長尺シートとは、主にポリ塩化ビニル(PVC)を主原料とし、幅1,800mm〜2,000mm程度のロール状で供給される高密度なビニル床シートの総称です。建築業界では「長尺塩ビシート」や「長尺ビニル床シート」とも呼ばれ、継ぎ目を最小限に抑えながら広面積を一体的に被覆できる建材として、公共施設や集合住宅で重宝されています。
住宅のリフォーム現場などで頻繁に比較されるのが、同じ塩ビ素材で作られた「クッションフロア(CF)」です。一見すると似たシート状の床材ですが、両者の内部構造と耐久性能には明確な断絶が存在します。建材卸業者の担当者は次のように解説します。「クッションフロアは中間層に発泡塩ビ層を含んでおり、踏み心地が柔らかくカッターで切断できる反面、土足歩行やハイヒール、重量物の点荷重に耐えられません。一方の長尺シートは、靴を履いたまま不特定多数の人間が往来する『重歩行』環境を想定し、緻密に固められた耐摩耗層を持っています」。
住宅の洗面所やトイレなどの専有部・軽歩行スペースでは扱いやすいクッションフロアが選ばれるのに対し、病院の廊下、スーパーマーケット、マンションの屋外開放廊下といった過酷な条件下で長尺シートが選ばれる理由は、この圧倒的な表面硬度と耐摩耗性にあります。家具の引きずりや台車の走行によっても表面が破れにくく、長期にわたり初期の美観を維持できる耐久設計が、両者を隔てる最大の境界線です。