喉仏の奥にある「喉頭」には、左右一対のヒダ状の組織である「声帯」が存在します。人間が声を出す際、肺から送り出された呼気によってこの声帯が毎秒100回から250回以上という猛烈なスピードで細かく接触・振動し、原音を作り出しています。
風邪を引き起こすアデノウイルス、ライノウイルス、あるいはインフルエンザウイルスなどが喉頭粘膜に感染すると、局所で激しい免疫反応が起こります。これが急性喉頭炎および声帯炎と呼ばれる病態です。炎症によって声帯の粘膜が赤く腫れ上がり(浮腫)、分厚くなると、左右の声帯が綺麗に合わさらなくなります。結果として振動運動が阻害され、呼気がそのまま漏れ出てしまい、かすれ声(嗄声:させい)や完全な失声状態に陥るのです。
「熱はないのに声だけが出ない」という現象に戸惑う患者は多く見られます。これは、全身性のウイルス感染自体は免疫によって沈静化しつつあるものの、声帯という極めて繊細な局所組織にのみ炎症性の浮腫や粘膜損傷がタイムラグを伴って残存しているケースが代表的です。また、アレルギー素因による気道過敏症や、就寝時の口呼吸による局所乾燥、胃酸が喉まで逆流する咽喉頭酸逆流症が風邪を引き金に悪化している可能性も考えられます。