疾患の医学的解説だけでは見えてこないのが、退院後の日常生活における親御さんの負担と葛藤です。SNSの当事者コミュニティや院内家族会で共有されるリアルな体験談からは、退院初期特有の生々しい課題が浮かび上がります。
現場で最も多く聞かれるのは、「モニターのアラーム音に対する恐怖」と「夜間の無呼吸不安」です。経鼻エアウェイや経管栄養チューブを装着したまま在宅療養へ移行する場合、テープかぶれのスキンケア、チューブの自己抜去、分泌物によるチューブ閉塞など、親御さんは24時間体制の緊張感を強いられます。
ある母親の手記には次のように記されています。
「NICUを退院した最初の数ヶ月は、子どもが息をしているかを確かめるために一睡もできない夜が続きました。鼻にチューブをつけた我が子をベビーカーに乗せて散歩に出ると、すれ違う人々の視線が突き刺さるように感じ、外に出るのが怖くなった時期もありました。しかし、生後半年を過ぎたあたりから急激に顎が出てきて、経鼻エアウェイを外せた日の感動は一生忘れられません」
ピエール・ロバン症候群の経過記録において際立っているのは、生後6ヶ月〜2歳頃に見られる下顎の「キャッチアップ成長」です。子どもの頭蓋骨と下顎骨は成長過程で急速に発達し、落ち込んでいた舌の位置が自然と前方に押し出されていきます。退院直後は先の見えないトンネルのように感じられても、1歳、2歳と誕生日を迎えるごとに気道管理から解放され、普通食を食べられるようになる子どもが大多数を占めます。