歴史的に見ても、閉所に対する恐怖は心理学者や医師たちの探求の対象となってきた。精神分析の創始者であるジークムント・フロイトは、抑圧された無意識の葛藤や幼少期のトラウマ的体験が身体化された防衛反応として恐怖症を捉えた。一方、近代の精神医学や臨床心理学は、この現象をより機能的・神経科学的なアプローチで解き明かしている。
アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)や日本精神神経学会の臨床ガイドラインにおいて、この状態は「限局性恐怖症(状況型)」として明確に分類されている。恐怖の本質は、空間そのものの狭さだけにあるのではない。「逃げ出せない状況でパニック発作が起き、助けが得られないのではないか」という破滅的な思考パターンの連鎖にあるのだ。認知療法の創始者アーロン・ベックが提唱したように、外部の刺激(閉所)に対して脳が「危険」「制御不能」という極端な認知的歪みを与えることで、心拍数の増加や過換気といった身体症状が増幅していく。