毎年11月23日、勤労感謝の日として知られるこの日の夜、皇居の奥深くで宮中祭祀の最高峰である「新嘗祭(にいなめさい)」が執り行われる。その年の新穀を神々に捧げ、天皇自らもそれを食す儀式である。
儀式は「夕の儀」と「暁の儀」の二度にわたり、漆黒の闇のなか、かがり火とわずかな蝋燭の灯りだけを頼りに進行する。神嘉殿(しんかでん)と呼ばれる建物の中で、天皇は神と差し向かいになり、新穀を共に召し上がる「神人共食(しんじんきょうしょく)」を行う。この秘儀の空間には、限られた掌典職(しょうてんしょく)以外、何人たりとも立ち入ることは許されない。
古代の農耕儀礼に端を発するこの祭儀は、単なる収穫感謝祭ではない。神の霊力を体内に取り込み、天皇自身の生命力を更新するという呪術的とも言える深遠な意味合いを帯びている。現代においてなお、古代の時間がそのまま息づいている稀有な瞬間だ。