誰もが勝敗は決したと思った。2点リードで迎えた9回裏、マウンドに立つ相手エースの手元には確固たる自信が漂っていた。しかし、甲子園には魔物が潜んでいる。連打で満塁とすると、一打サヨナラの場面でバッターボックスに入ったのは、これまで大会無安打に苦しんでいた7番打者だった。
カウント2-2からの5球目。真ん中高めに入った直球を鋭く振り抜いた打球は、ライト線を襲う劇的な一打となった。走者2人が還り、土煙の中で沸き起こる大歓声。一瞬にして暗転したマウンドと、もみくちゃになる背番号「7」。高校野球の残酷さと美しさが一瞬に凝縮された瞬間だった。