本作のプロットについて語られる際、避けて通れないのが新海誠監督が築き上げた叙情的な世界観との比較だ。美しい空の情景や繊細な光の描写は一見するとその文脈を継承しているように映る。しかし、内実は大きく異なる。
描かれるのは、壮大なSFファンタジーの設定を骨格としながらも、人間の剥き出しのエゴや痛みに深く切り込んだ濃密なヒューマンドラマだ。美しい景観の裏側に潜む残酷な現実、選択を迫られる若者たちの苦悩が容赦のない筆致で綴られる。「美しいだけの映像美にはしない」という監督の強い意志が、物語の隨所から滲み出ている。単なるフォロワーであることを拒絶し、独自の神話体系を構築しようとする気概がそこにはある。