近年、この閉ざされた空間に未曾有の地殻変動をもたらしているのが、西成区全体に押し寄せるインバウンドの急増と、SNSによる情報拡散だ。とりわけYouTubeの隠し撮り動画や、Netflixで配信される日本のアンダーグラウンド文化を扱ったコンテンツによって、飛田の存在は国境を越えて瞬く間に知れ渡ることとなった。
かつては日本人男性を中心とした閉じたコミュニティだった場所に、スマートフォンのカメラを持った外国人観光客が物珍しそうに迷い込む光景が日常化している。これに対し、組合側は多言語での警告看板を設置するなど警戒を強めているが、デジタル時代の「見たい欲望」と、街が守り続けてきた「不可視のルール」との摩擦は日々深刻さを増している。
「見世物ではない」という現場の矜持と、グローバルな観光消費の波。西成という土壌が持つ独特の包容力をもってしても、ネット社会がもたらす無遠慮な視線を完全に制御することは極めて困難な課題となりつつある。