インターネットの掲示板やSNS、知恵袋などでロンドンやイギリスの気候を調べると、「年中ずっと雨が降っていて陰鬱」「傘が手放せない」といったネガティブな体験談が溢れています。しかし、気象統計と現地のリアルな生活環境を照らし合わせると、意外なギャップが浮かび上がってきます。
前述の比較表の通り、ロンドンの年間降水量は約600ミリしかありません。これは東京(約1,600ミリ)の4割以下、雨が少ないとされる瀬戸内海沿岸(約1,000〜1,200ミリ)と比べても半分程度に過ぎません。実は、ロンドンは雨の「量」自体は非常に少ない都市なのです。
それにもかかわらず、なぜ「雨の街」という強烈なイメージが定着しているのでしょうか。イギリス在住者や特派員の手記・SNSのリアルな証言を拾うと、その正体が見えてきます。
「バケツをひっくり返したような土砂降りはほとんどない。代わりに、霧雨のような細かな雨(drizzle:ドリズル)が1日に何度も降ったり止んだりを繰り返す」(ロンドン在住10年の日本人ビジネスマン)
「現地のイギリス人は折りたたみ傘すら持ち歩かず、フード付きの防水ジャケットを着て早足で歩くだけ。傘を差すほどの雨量ではないからだ」(現地留学生の投稿)
つまり、降水量(mm)ではなく「降水日数」と「日照時間の短さ」が人々の体感を作っています。偏西風が運ぶ雲が絶えず上空を覆い、冬場は午後4時には真っ暗になる高緯度特有の現象と合わさって、重たい曇天の日が続きます。これが「いつも天気が悪い」という心理的印象を増幅させているのです。
一方、夏(6月〜8月)の現地生活は一変して「天国」と称されます。湿度が低いため気温が25℃近くまで上がっても汗ばむことがなく、夜の9時・10時過ぎまで外が明るい白夜に近い現象が楽しめます。テラス席でビールを飲む現地の人々の姿は、過酷な冬の曇天を耐え抜いたご褒美のような生活文化として根付いています。