インターネット上の不動産相談掲示板やSNS上には、境界立ち会いに起因する悲痛な体験談が溢れています。大手法律相談ポータルに投稿された相談内容を精査すると、トラブルの半数以上が「越境物」の扱いに端を発していることが分かります。
「長年、隣の庭木や雨樋が自宅敷地内に数センチ張り出していたが、立ち会いの席で『境界が確定したら今すぐ撤去しろ』と怒鳴り合いになった」「昔造った擁壁の基礎(底盤)が地中で越境しており、建て替え時に撤去費用を巡って泥沼化した」といった土地境界立ち会いトラブル事例は枚挙にいとまがありません。
ここで極めて重要な防御策となるのが、越境物覚書法的効力の正確な理解と運用です。もし境界線上に越境物が存在する場合、ただちに解体や撤去を求めるのではなく、「将来、建物の建て替えや大規模改修を行う際に、越境側の責任と負担において是正する」という条件を明文化した覚書を交わすのが実務上の定石です。覚書には必ず以下の要件を盛り込みます。
- 現在、構造物(屋根、雨樋、ブロック塀、樹木、地中埋設管など)が何センチ越境しているかという現状の相互確認
- 建物の建替え、塀の修繕、樹木の伐採時に是正・撤去する旨の誓約
- 土地の所有権が第三者(子孫や新たな買い手)に移転した場合も、この覚書の内容を新所有者に継承させる旨の承継条項
口約束だけの「そのうち直すから」という言葉は、当事者が代替わりした瞬間に霧散します。実効性のある境界立会後のトラブル防止策とは、冷徹なまでに書面でエビデンスを残し、将来へのリスクを封じ込めることに他なりません。