日本社会において糖尿病患者が直面する最も深刻な障壁は、病態そのものよりも「自己管理が甘いから病気になったのだ」という世間の冷ややかな視線です。とりわけ1型糖尿病患者に対するこの偏見は、完全な事実無根であり、一刻も早く払拭されなければなりません。
1型糖尿病の原因と真相を医学的に紐解くと、その本態はウイルス感染などを引き金に発症する「自己免疫疾患」です。本来であれば外敵から身を守るはずの免疫システムが暴走し、自分自身の膵臓ランゲルハンス島にあるβ細胞を異物とみなして破壊してしまいます。この現象に、甘いものの過剰摂取や運動不足といった生活スタイルは一切関与していません。
社会学や心理学の領域では、こうした不条理な偏見の背景に「公正世界仮説(Just-world hypothesis)」という認知バイアスが存在すると指摘されています。「良い行いには良い結果が、悪い行いには悪い結果が返ってくる」と信じたい人間の心理が、「重い病気になるのは本人の行いに問題があったからだ」という短絡的な自己責任論へと変換されてしまうのです。この理不尽なラベリング(スティグマ)が、学校現場でのいじめや職場での就職・昇進差別、さらには患者自身の自己否定感を生み出す元凶となっています。