見分けにおいて外見以上に本質的な差異となるのが、日本列島における生息サイクルと渡り(マイグレーション)の実態です。これを知るだけで、「今見ている鳥がどちらであるか」を季節から高確率で推定できます。
ウミネコはロシア南東部、朝鮮半島、中国東部、そして日本列島周辺に限定して分布する東アジア特有の種であり、日本では1年を通じて国内にとどまる留鳥(りゅうちょう)です。春先になると特定の島や断崖絶壁に数万羽規模の巨大な集団繁殖地(コロニー)を形成します。
その代表格が、国の天然記念物にも指定されている青森県八戸市の蕪島(かぶしま)です。蕪島神社が鎮座する小高い島には、毎年3月上旬になると約3万〜4万羽ものウミネコが一斉に飛来します。現地では足の踏み場もないほど密集して営巣し、5月頃の孵化、7月頃の巣立ちを経て、8月中旬には島を離れて全国の海岸線へと散らばっていきます。初夏から盛夏の日本の海水浴場や港町で見かけるカモメ型の鳥は、渡りのスケジュール上、ほぼ100%ウミネコだと断定して差し支えありません。
これに対し、標準和名としての「カモメ」はシベリア東部やアラスカ方面の亜寒帯・ツンドラ地帯で繁殖を行い、厳しい北国の冬を避けるために秋(10月下旬頃)になると日本へ南下してくる冬鳥(ふゆどり)です。越冬地となる本州や九州の穏やかな内湾や河口、干潟で冬を過ごし、桜が咲き誇る4月中旬から5月上旬には再び繁殖地である極北の地へと北上していきます。つまり、真夏の日本には原則としてカモメは滞在していないのです。