社会現象を巻き起こした『君の名は。』の主題歌群は、カバーカルチャーにおいてもひとつの金字塔となった。「前前前世」や「スパークル」、「なんでもないや」といった楽曲群は、世界各国のシンガーやインストゥルメンタリストによって無数に演奏されてきた。オーケストラアレンジによる壮大なアプローチから、ベッドルームポップ的なミニマリズムへと落とし込んだトラックまで、その振れ幅の広さは原曲の骨格がいかに強固であるかを物語る。
一方で、熱心なリスナーの琴線を激しく揺さぶるのは、インディーズ期や初期アルバムの隠れた名作たちだ。「有心論」や「最大公約数」、「me me she」といったゼロ年代のオルタナティヴ・ロックを象徴するナンバーが、気鋭の女性シンガーによるピアノ弾き語りやネオソウル風のグルーヴで再構築される瞬間。そこには、青春の痛切な記憶が現代の質感で蘇るような、独特の美しさと鳥肌が立つほどのスリルが宿っている。