掛け算筆算の最大の鬼門は、3年生の後半に登場する「2桁×2桁(および3桁×2桁)」の筆算繰り上がり位置問題です。ここで多くの小学生が算数嫌いへと転落します。
たとえば「38 × 47」を計算する場合を考えてみてください。
- まず一の位「7」を「38」に掛けます(7×8=56、繰り上がり5。7×3=21、21+5=26で部分積は266)。
- 次に十の位「4」を「38」に掛けます(4×8=32、繰り上がり3。4×3=12、12+3=15で部分積は152)。
- 最後に2つの部分積(266と1520)を足し合わせて「1786」を導き出します。
このとき、もし足し算筆算と同じ感覚で「横棒の上」に繰り上がりの「5」を書いてしまうと、十の位の計算で出てくる繰り上がりの「3」を書く場所がありません。さらにその下には足し算用の横棒が引かれ、そこでも繰り上がりが発生します。
ある教材開発者の観察手記によると、つまずく子どもの行動パターンには顕著な特徴があります。
「繰り上がりの数字をどこに書けばいいか迷い、結果的に余白のどこかに中途半端に小さく書いてしまう。すると、十の位の計算をする段になって『あれ、この小さな数字はさっき使ったやつだっけ? それともこれから足すやつだっけ?』と見失い、重複して足したり足し忘れたりして自滅していくのです」
つまり、2桁×1桁のときに「どこでもいいから書いておきなさい」と曖昧に放置したツケが、2桁×2桁に進んだ瞬間に一気に噴出する構造になっています。