毎年2月下旬から3月上旬にかけて行われるA級最終9回戦は、通称将棋界の一番長い日と呼ばれ、静岡市の「浮月楼」などを舞台に全5局が一斉に指されます。朝9時の対局開始から翌日未明の終局まで、広大な大盤解説場とインターネット配信を行き来しながら何十万人もの将棋ファンが固唾を呑んで見守ります。
現地の控室や関係者の証言によると、深夜2時を回った対局室には、極度の疲労と極限の緊張感が充満します。暖房が効いた部屋の中にあっても、棋士の吐息や扇子の音だけが乾いた空間に響き渡ります。勝敗が確定した瞬間の勝者の安堵と、敗者の茫然自失とした表情の対比は、ドキュメンタリー番組や手記でも数多く描写されてきました。
SNSやコミュニティ上でも「午前3時の大逆転劇に叫んだ」「推し棋士の残留確定を見届けるまで眠れない」といった声が毎年溢れかえります。盤上の駒ひとつの進退に棋士人生のステータスが直結しているからこそ、観戦者もまた強烈な感情移入を伴ってこの夜を共有しています。