ココイチの歴史を語る上で欠かせないのが、創業者・宗次徳二氏のあまりにも壮絶な生い立ちです。自著や過去のドキュメンタリー取材で明かされたその生い立ちは、現代のビジネスエリート像とは対極に位置する過酷な現実の連続でした。
1948年に石川県で生まれた宗次氏は、生後間もなく孤児院(乳児院)に預けられ、3歳のときに養父母に引き取られました。しかし、養父は重度のギャンブル狂いであり、生活は困窮を極めました。電気や水道を止められることは日常茶飯事で、空腹を満たすために道端の雑草を口にし、パチンコ店で落ちた玉やシケモク(タバコの吸い殻)を拾って小遣いを稼ぐ日々を送っていたといいます。
「明日の食べ物どころか、今日の命をつなぐことに必死だった」と手記で振り返る幼少期の経験が、宗次氏の心に「どんな逆境にも耐えうる忍耐力」と「わずかな恩義や人の温もりに対する深い感謝」を刻み込みました。高校卒業後は八百屋や不動産会社で必死に働き、そこで人生の伴侶となる直美氏と巡り合います。何もないゼロの状態から、夫婦ふたりで運命を切り拓く挑戦が始まりました。