八代亜紀という稀代のアーティストを語る上で欠かせないのが、その比類なきセルフプロデュース能力と美的センスである。1970年代に『舟唄』や『雨の慕情』といった国民的大ヒット曲を連発し、演歌界の頂点に君臨した彼女は、同時に繊細な筆致を持つ洋画家としても知られていた。
彼女にとって自らの身体や存在そのものが表現の媒体であった。若い頃からトレーニングを怠らず、凛とした立ち姿を維持し続けた姿は、同世代の女性たちからも熱狂的な支持を集めていた。当時、一流のカメラマンたちと組んで制作されたビジュアル作品群は、単なる芸能人のグラビアという枠組みを超え、光と影を巧みに計算した「美術品」としての性格を強く帯びていたのである。