石川ひとみさんが歌う『まちぶせ』の発売年は1981年4月21日。通算10枚目のシングルとして世に出されたこの楽曲は、オリコン週間チャートで最高4位まで上り詰め、累計約40万枚近いセールスを記録しました。しかし、リリース当初から平坦な道のりだったわけではありません。
1978年に「右向け右」で歌手デビューを果たした石川さんは、抜群のルックスと歌唱力を持ちながらも、シングルチャートでは決定打に恵まれない時期が続いていました。NHKの人形劇『プリンプリン物語』で主人公・プリンプリンの声優に抜擢され、お茶の間の知名度は抜群だったものの、本業である歌手活動においては「次のシングルで結果が出なければ契約終了も辞さない」という背水の陣に追い込まれていたのです。
そこで運命を切り拓いたのが、石川さん自身の情熱でした。当時、新人時代から親交があり憧れていた三木聖子の原曲(1976年発売、作詞・作曲:荒井由実)を深く愛していた石川さんは、「どうしてもこの曲を歌いたい」と制作陣に強く直訴しました。これが決定打となり、運命的なカバーの経緯へと繋がっていきます。
編曲を担当したのは名匠・松任谷正隆氏。三木聖子版の哀愁漂うフォーキーなアレンジから一転、1980年代初頭の洗練されたポップスへと昇華させました。石川さんの持つどこまでも澄んだボーカルと劇的なアレンジが見事に融合し、ラジオのリクエストや有線放送から火が点き、異例のロングヒットを記録したのです。