JR東日本が公表する駅構内図を前に、立ち尽くした経験を持つ人は少なくありません。東京駅の地下空間が「ダンジョン」と形容される最大の理由は、単なる面積の広さではなく、多層レイヤー構造とブランド名の重複に起因しています。
現場取材で見えてくるのは、利用者が無意識に抱く「グランスタ=ひとつの大きなデパートのような空間」という思い込みの罠です。実際のグランスタは、以下の3つの主要ゾーンに分断されており、それぞれ改札内外の境界線が明確に引かれています。
第1に、駅の心臓部であるグランスタ東京 改札内エリア。中央通路を中心とする1階と、銀の鈴広場を擁するグランスタ東京 地下1階の2フロアで構成され、乗り換え客や新幹線利用者の胃袋とギフト需要を一手に引き受けています。
第2に、丸の内地下エリアに広がる「グランスタ丸の内」。ここはグランスタ東京 改札外に位置しており、改札を出なければ立ち寄ることができません。「グランスタ丸の内のフロアマップを見ながら改札内を探していた」というトラブルは、現場で最も頻発している誤認事例のひとつです。
第3に、八重洲北口側の改札外にそびえる飲食店街「グランスタ八重北」。地下1階の「黒塀横丁」、1階の「八重北食堂」、2階の「北町酒場」から成る巨大飲食ゾーンであり、こちらも改札の外に位置します。グランスタ東京 八重北 フロアマップを照合すると分かるとおり、北通路や八重洲北口改札を介して接続しているため、改札内と混同して迷い込む利用者が後を絶ちません。
空間認知心理学の観点からも、東京駅の地下は外光が入らず、平行する通路が多いため、東西南北の方向感覚を瞬時に喪失しやすい構造特性を持っています。「丸の内側(赤レンガ駅舎側)」と「八重洲側(新幹線改札側)」の軸を頭の中で固定しない限り、フロアマップを眺めるだけでは迷路からの脱出は不可能です。