彼を語る上で欠かせないのが、大相撲史に燦然と輝く「第53代横綱・琴櫻」の存在だ。祖父の偉大な名跡を継承した男の背中には、佐渡ヶ嶽部屋の伝統と血統という重厚な期待が重くのしかかっていた。
四股名を改名した当初、その名に恥じない相撲を取らなければならないというプレッシャーは想像を絶するものだったはずだ。しかし彼は、その重圧を糧へと変えた。父である師匠・佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)の厳格な指導のもと、伝統の「猛牛相撲」を現代版へとブラッシュアップさせていったのだ。
祖父が誇った泥臭くも圧倒的な前進力。それに現代の力士に求められる体幹の強さと柔軟性を融合させた相撲スタイルは、まさに令和の角界が生み出した最高傑作といえるだろう。