冒頭近くに登場する「カムチャツカの若者がきりんの夢を見ているとき」というフレーズは、多くの日本人の胸に深く刻まれている。この一行が提示する時間と空間の跳躍は、読者に強烈なインパクトを与える。
北方の極寒の地・カムチャツカ半島と、アフリカのサバンナを象徴するキリン。地理的にも生態的にも遠く離れたエレメントが、ひとつの詩行の中で鮮やかに交差する。自分がベッドの中で目を覚ます瞬間、世界のどこかでは誰かが眠りにつき、あるいは異国の街で誰かが朝食をとっている。谷川俊太郎は「朝」という共通の時間を軸に、世界中の人々や生き物が目に見えない糸でつながっていることを、押しつけがましさのない優美なタッチで示してみせた。