母の急逝を受け、人間活動のため音楽活動を休止していた宇多田ヒカルは、約6年もの沈黙に入りました。そして2016年、母への哀悼と自らの再生を刻み込んだ歴史的傑作アルバム『Fantôme』(フランス語で「気配」「幻影」の意)を発表します。
NHK連続テレビ小説の主題歌となった「花束を君に」や、死生観を静かに歌い上げた「真夏の通り雨」、そして「道」といった楽曲には、亡き母への切なる祈りと感謝が痛いほど込められています。
「どんな言葉も、どんな感謝も、母に直接届けることはもう叶わない。それでも母の血は私の中に流れ、私の歌の中に生き続けている」――その覚悟とともに放たれた歌声は、藤圭子がかつて放った圧倒的な魂の叫びと見事なまでに共鳴し、日本のみならず世界中の音楽ファンを涙させました。