「なぜ、これほどまでに香りが豊かで雑味がないのか?」——多くの人が抱くこの疑問の答えは、極めて繊細な火入れ作業にある。
一般的なほうじ茶が葉を強く深焙煎して褐色に仕上げるのに対し、加賀棒茶は選りすぐりの一番茶の茎を中心に使い、遠赤外線などで「浅焙煎(あさばいせん)」を施す。焦がすのではなく、熱を芯まで均一に通す。これにより、葉緑素を保ったまま茎の内側に眠るアミノ酸や香気成分が鮮やかに花開くのだ。一瞬の油断が香りを損なうため、職人はその日の気温や湿度に応じて秒単位で火加減を微調整する。この妥協なきこだわりこそが、甘く香ばしい唯一無二の芳香を生み出している。