時計の針を1995年後半に戻そう。当時、株式会社カプコンのアメリカ現地法人(カプコンUSA)は、日本で完成間近だった新作ホラーゲームの北米投入に向けて準備を進めていた。しかし、現地マーケティングチームの前に巨大な障壁が立ちはだかる。「Biohazard」という商標が、すでに米国で登録されていたのだ。
障害となったのはふたつあった。ひとつは、Eurosoft社が当時DOS向けにリリースしていた同名ゲームソフト『Bio-Hazard』。もうひとつは、ニューヨークを拠点に活動していた同名のハードコア・メタルバンド「Biohazard」の存在である。特に後者は音楽業界のみならずマーチャンダイズ全般で強力な商標権を保持しており、カプコンが米国で「Biohazard」の商標をすんなり取得することは法的に不可能だった。
発売中止の危機を回避するため、カプコンUSAのオフィス内で緊急のネーミングコンペが開催された。社内投票の結果、ひとりのスタッフが提案した『Resident Evil(住まう悪霊、潜む悪)』が最多票を獲得する。舞台となる不気味な洋館のシチュエーションを見事に言い当てたタイトルだった。日本の開発陣からは「少し古風ではないか」という懸念の声も上がったが、背に腹は代えられない。こうして、西洋圏における伝説のタイトルが誕生した。