なぜ古典の名作がアダルトカルチャーやネットミームと結びついたのか、その経緯を紐解くには日本の深夜ラジオやサブカルチャー史の文脈を無視できません。昭和から平成にかけて、深夜番組や成人向けパロディ漫画において、重厚な世界文学の題名を下ネタに置き換える言葉遊びは定番のネタとして親しまれてきました。
『カラマーゾフの兄弟』が描く「父と息子の確執」「愛憎劇」「ドロドロとした情欲」というテーマ性は、奇しくも昼ドラや成人向け企画が好むドロ沼の人間関係と親和性が高かった側面があります。ここから派生した「エロマーゾフの兄弟」というパロディ表現は、家族や親族関係を舞台にした企画モノ、とりわけ人妻・義母・同級生の母親などをテーマにした成人向け実写ビデオや同人コミックのタイトルとして長年重宝されてきました。
文豪の名を借りることで背徳感やドラマ性を誇張し、受け手に対して「ただならぬ愛憎劇が展開されるのではないか」という錯覚を抱かせる巧みな記号として機能し続けているのです。